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ビジョン経営と戦略創造(ネクストマネジメント研究所代表櫻井延彦著)

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    • ページ数 : 42ページ
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    資料紹介

    構造変化時代のビジョン経営のあり方と組織革新を実行するための重要な着眼点、考え方について解説しています。

    資料の原本内容

    ネクストマネジメント研究所
    代表 櫻井延彦
    1 ビジョン主導型の経営
    ◆ビジョンが変化を起こす
     今、日本の産業界、企業は構造変化の時代の中で経営転換のための苦境に直面している。多くの企業は、次の時代の経営の方向を見失っているように見える。こうした先が見えない構造変化の時代ほど、企業は、次代へ向けての未来像を指し示すことが必要である。企業も創業の時代には、創業者をはじめ社員全員が理想に燃え、企業の将来像や夢、ロマンを描くことが多い。そして、そのビジョンの実現に向けて創業者も社員もエネルギーを傾注して、必死になって行動する。創業時には、経営資源としてのものや金に恵まれていることは少ない。
     しかし、企業を構成する人々が夢の実現に向けて力を結集していると、創造的風土が形成されて、そこに戦略意思が生まれ新しい技術や製品が創出される。創業時の企業には、ビジョン実現に向けて活力があふれ、勢いが見られる。しかし、創業時から30~50年も経つと、経営者も世代交替となり創業時の理想やビジョンをだんだんと失って行き、経営スタイルも既存の事業を維持するための保守的経営に陥りやすい。こうして、企業は徐々に活力を失い衰退を始める。現在のように、これまでの延長線上に無い構造変化の時代には、既存事業を汲々として守るだけでは縮小均衡型の経営に陥ってしまう。
     ビジョンは、企業の現在と未来をつなぐ懸け橋であり、変革のための原動力となる。
     企業組織は人間と同じく精神エネルギー体としての側面を有している。成長を続けるためには、人の人生ビジョンと等しく将来に向けて組織のメンバーが、エネルギーを傾注するに値する夢とロマンあふれる企業ビジョンが必要である。とりわけ、今日のように企業の変身が要請される環境下では、経営変革の核としてビジョンが大きな意味を持っている。
    ◆何故今、ビジョンが大事なのか
     企業の経営スタイルを見てみると、いろいろなタイプがある。理想を掲げ、志の高い経営構想を持って経営をおこなっている企業と、そうしたものを持たずに当面の対応に追われている企業がある。経営環境の激変下では、前者の経営スタイルの企業と後者の経営スタイルの企業では、その経営成果は自ずから大きな格差がついてくる。志の高いビジョンを掲げた企業では、そのビジョンを巡って、組織内でさまざまな戦略論議が上下・左右のメンバー間でおこなわれ、新しい事業アイデアも生まれやすく経営の新境地が開けてくるチャンスも多い。これに対してビジョンを持たない企業では、外部環境の変化に振り回され易く、モグラたたき型の経営に陥ってしまうことが多い。
     企業にとってビジョンは、人々の夢を束ね組織の成長エネルギーを引き出すために、いつの時代にも不可欠なものであるが、今日のように不透明で先の見えない時代にこそ、それが経営にとって大きな意味を持っている。
     これまで、日本の企業は自らのビジョンを持たなくても、欧米の一流企業をモデルにしてそれにキャッチアップする経営でやって来れた。しかし今、世界的大競争の時代を迎え、これまでの効率第一主義、欧米企業キャッチアップ型経営では、経営の閉塞状況から脱却出来ない。企業は経営の再創造を迫られており、ここにビジョンが重要になって来ている第一の理由がある。
     第二の理由は、日本の企業にとってこれまでの量的拡大一辺倒の経営のやり方では、国際的に通用しなくなって来ており、経営パラダイムの転換が必要になってきていることにある。つまりビジョンの質が問われており、地球環境や社会性、国際性という次元から貢献度の高いビジョンの構築が期待されている。
     第三の理由は、経営環境が構造的に激変して行く時代では、その環境にパッチワーク的に対応するだけでは、いつも後追い型の経営に陥ってしまい、経営成果がなかなか上がらなくなって来ていることにある。またそうした経営では、他社追随型の対応になりがちで競争上も優位には立てない。従って、今は個々の企業が未来の生きる姿を、主体的に選択しなければならない時代である。他からの借り物ではなく、その企業自身のビジョンを、自ら描かねばならない。
     新しい次元で経営理念を再構築し、「自社の生きる未来像」を鮮明に描き、そこに至る道筋を定めなくてはならない。経営の再構築が必要な時代には、どの企業にも再生の出発点としてのビジョンは欠かせない。
    ◆変革の核としてのビジョン
     ビジョンとは、企業が長期に努力の対象とすべき理想像のことである。つまり、企業の将来へ向けてのグランドデザインと言える。従って、ビジョンは社員の理想や夢の総和として、志の高い理念や想いが反映されていなければならない。ビジョンとは、企業内のメンバーがそれに向かって努力して行けば、現在よりもすばらしい未来が期待出来ると見通しを持った未来像のことである。そこに、ビジョンが、トップ層や経営戦略スタッフの専有物であったり、分析型の数値目標計画だけのものであったりしてはならない理由がある。そこでビジョンを構築する場合には、熱い血潮の通った企業全体の共有物として、それを創り上げて行くことができるかどうかが、経営の今日的課題であると言える。
    図表2-1 コーポレートビジョンを核にした企業の経営革新プロセス
     また企業は今、100年に1度という構造変化の中で、これまで営々として築き上げて来た経営価値、事業構造、経営システム、技術、管理制度、ビジネス論理などを破壊して、新たな事業環境を創造できる姿を再構築しなければならない地点におかれている。こうした経営変革の核として、組織のイノベーションを促進するものがビジョンである。
     今日のように経営環境の不透明性が大きい時代には、環境変化に振られるばかりでなく、新たなビジョンを打ち出し、企業が主体的に環境に働きかけ、自ら事業環境を創造して行かなくてはならない。ビジョンこそが、企業に未来の方向を変革のエネルギーを与えるものである。優れたビジョンは、企業にとって次のような意味を持っている。
    ①自社が新たにめざすべき方向と、生きる領域を組織の内外に打ち出し、経営体としての個性を表明する。
    ②社員に夢と新しい経営価値を与え、革新と創造のエネルギーを引き出す
    ③組織、人に新しい目標の創造を促す
    ④組織のすみずみから戦略を導きだし、新たな経営像の実現に向けて組織的集中を促す
    ⑤組織に中長期的指針を与え、人の自律性を高め共働の企業文化を形成する
     企業に新しいビジョンが構築されると、組織には活力がよみがえり経営革新のうねりが高まってくる。
    ◆ビジョン創造のための戦略的視点
     これからの時代は、まず経営管理者層にビジョンによって、企業を変革して行くリーダーシップが期待される。
    ①我が社は、今後どのような経営理念によって社会、顧客に貢献して行くのか
    ②我が社はどのような事業領域を対象とし、将来どのような姿にしていくのか
    ③将来、自社の関係者と社員には、どのような幸福を与えていくのか
     このような、将来に向けての企業の基本的な道しるべを示すことが、経営管理者層に要請されている。
     構造変化の激動時代を乗り切り、企業が発展して行くためには、これまでの経営パラダイムと経営システムを、抜本的に組み替えて行くことが要請される。日本の企業でも、欧米の企業でもこれまでのパラダイムに安住していられる企業はほとんど無くなって来たと言える。これまで日本の企業が得意としてきた積み上げ的、漸進型経営が壁にぶつかっている。多くの日本企業は、これまで現場での小さな改善を積み上げて、経営の効率を最大限に高める管理システムを築き上げ、それによって欧米の企業にキャッチアップして来た。
     しかし今は、こうしたハウツー型キャッチアップ経営では、経営成果がなかなか上がりにくくなっている。経営管理者層には新しい経営観にもとづく、新たなビジョンの創出が期待される。次代に向けて大量生産大量販売型のマス・カンパニーから世界にただ一つと言うような、独自性の高い企業像を築いて行くことが求められている。企業経営の要素を抜本的に再設計し、新しい市場価値を創造できる企業に変身させて行く、経営の“リデザイン”が急務になっている。
     リデザインとは、企業が経営をおこなうための基本要素である経営理念、ドメイン、戦略、経営資源、組織、システムを抜本的に再設計し、“効率第一主義型企業”から“市場価値創造型企業”に変身することを言う。
     市場価値創造型企業では、利益はこれまでの量と効率から生まれるのではなく、顧客の期待を探索し、新しい機軸から他社に先駆けて、優れた便益と解決策をたゆみなく創出することによって生まれてくる。
    ◆ビジョンの構成要素
     さまざまな企業の発展の歴史を見てみると、企業が創業期から成長発展して行く過程では、環境を後追いするというよりも、“戦略意思”を主導にした経営活動が多く見られる。ことに企業の創業期には、組織を構成するメンバー全員が“我が社はこうなりたい”と強力にビジョンを想い描いている。組織に共有化されたビジョンが発展の原動力になっているわけだ。このことは人の生き方にもよく似ている。現状に流されながら生きるのか、こうありたいという“人生ビジョン”を持って生きるのかの違いである。どちらの人生が素晴らしき人生になるかは自ずから決まってくる。ビジョンは自ら変化を起こし、未来を創り出す役割を果たす。従ってビジョンは、社是・社訓のような行動基準や単なる長期的売上目標とは異なるわけだ。ビジョンは次のように、企業の生きて行く領域(ドメイン)や、社会的貢献の方向、社員が共感できる魅力などを構想化したもので...

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